HOUSE OPINION — HASHHUB RESEARCH

2028年は、スタートラインか。
準備が終わっているべき時点か。

2028年・機関投資家参入に向けた金融機関のターニングポイント
——「今動ける役割」と「待つ役割」

2027年の金商法改正施行、2028年の申告分離課税——スケジュールは、もう全員が知っています。それでも競争力に差がつくのは、同じ社内に「今動ける役割」と「待つ役割」が同居しているから。役割単位の準備地図を、一枚に描きました。

2027年夏
改正金商法 施行(見込み)
2028
申告分離課税 約20%へ(目標)
4.8兆円
2030年末 暗号資産ETF残高(当社試算)
SCROLL
EXECUTIVE SUMMARY

要点は、3つ。

POINT 01

日程は共有済み。
分かれるのは「役割」ごと

2027年とされる金商法改正施行と、2028年目標の申告分離課税は金融機関の間で共有済み。しかし、いま何に着手すべきかは「業態」ではなく、その金融機関が担う「役割」ごとに分かれます。

POINT 02

同じ社内に「動ける役割」と
「待つ役割」が同居する

信託銀行のカストディ、証券会社のST対応、保険会社の保険組成は制度を待たずに動けます。一方でETFの販売や自己勘定での保有は、運用会社の組成やガイドライン・バーゼル規制を待つ役割です。

POINT 03

先行優位は、依存の浅い
役割から着手して生まれる

先行優位は業態の看板から生まれるのではありません。役割ごとの依存関係を見極め、依存の浅い役割から着手することで生まれる——それが本レポートの結論です。

CHAPTER 01 — REGULATORY TIMELINE

制度スケジュールを読む

閣議決定・衆院可決までは確定。成立・公布以降は見込み(施行日は政令指定)。金商法改正・投信法施行令・申告分離課税の3つは役割が異なり、後者2つは連動しています。

2026年4月
金商法改正案 閣議決定確定
暗号資産を資金決済法から金商法へ移管する政府案を決定し、国会へ提出。
2026年6月
衆議院本会議で可決確定
参議院で審議中(本レポート執筆時点)。成立が視野に。
2026年中(見込み)
成立・公布見込み
施行は「公布の日から起算して1年を超えない範囲内」で政令により指定。
2027年 夏頃(有力)
改正金商法 施行見込み
暗号資産が「金融商品」に。インサイダー規制・情報開示等が適用。
2028年(最有力/目標)
投信法施行令改正・申告分離課税目標
暗号資産ETF・公募投信の組成・販売が解禁。税率は最高約55%(総合課税)から約20%(分離課税)へ。両者は連動して位置づけられています。
CHAPTER 01 — TWO-LAYER CONSTRAINTS

金融機関の制約は、二層で見る。

①をクリアしても②が残る——この二層のどちらに、どれだけ縛られるか。それが役割ごとの「今やる/待つ」を分けます。

法令上の参入の可否

業法・監督指針のレイヤー。銀行・保険が暗号資産をどの条件で扱えるか。本体保有の可否は金融審WG報告(2025年12月)が方向性を示した段階で、業態別ガイドラインはこれから固まります。

保有の経済性(バーゼル規制)

1,250% リスクウェイト

裏付けのない暗号資産(グループ2)への掛け目。①をクリアしても②が残るため、メガバンク(国際統一基準行)や大手証券の自己勘定保有は、当面「重い選択」であり続けます。

CHAPTER 02–03 — THE MAP

主体 × 役割の見取り図

同じ金融機関でも、担う役割ごとに制度・他者への依存度は異なります。縦に主体、横に役割。各セルにカーソルを合わせて、自社の座標を確かめてください。

今動ける(制度の細部を待たず着手可) 運用会社の組成待ち(受動) 制度・ガイドライン待ち 構造的に重い(バーゼル1,250%等) 該当が薄い
主体 \ 役割 交換業の保有自己勘定での保有・投資ステーブルコイン発行ETF・投信の組成ETFの販売カストディST・トークン化への備え
銀行(メガ) 子会社で参入可認可制 バーゼル1,250%経済性で重い 信託型SC3行・2026年度実取引へ 様子見
証券会社 子会社で参入可野村(Laser Digital)先行 大手はバーゼル対象最終指定親会社 運用会社待ち受動・後発 先行着手可STが第一歩
信託銀行 発行済JPYSC・2026年6月発行 参入準備が先行JADAT・NEC×CG 着手可
保険会社 制度待ち適格資産・資本規制
運用会社(AM) 設計は今・申請は確定後 着手可
その他機関投資家(年金等) 受託者責任で注視
暗号資産交換業者 自社が交換業 本業として保有 流通に関与余地 流通に関与余地 中核機能自社で保管 中核機能取引の場

出所:金融審議会WG報告(2025年12月)および各社一次開示に基づきHashHub Research整理。状態は相対評価であり、各役割の参入可否・優劣を確定的に示すものではありません。※保険会社は別途、暗号資産関連保険の「組成・引受」という動ける役割を持ちます。

信託銀行 — 動ける役割が最も多い

発行体(JPYSC)・カストディ(JADAT、NEC×Crypto Garage)と、依存の浅い役割を複数抱えるため、自社の判断で着手できる範囲が最も広い位置にあります。

証券会社 — 役割で最も割れる

ETFの「販売」は運用会社の組成を待つ後発の役割。一方でST・トークナイゼーションへの「備え」は今から動けます。同じ社内に、先行と後発が同居しています。

CHAPTER 04 — MARKET SIZING

準備を急ぐ根拠——2つの市場が、いま立ち上がる。

既存保有者の移行・NISA等の新規資金・富裕層/法人の追加配分——3つの資金の出どころを積み上げて試算しました(資金流入ベース・価格変動は織り込まず)。

暗号資産ETF残高の推計(当社試算・兆円)

国内ETF市場(約132兆円・2026年5月末)比では 0.8% → 2.0% → 3.6%。出所:JVCEA・投資信託協会等に基づきHashHub Research試算。
0 兆円
2030年末の暗号資産ETF残高(当社試算)。解禁初年度の2028年でも約1.1兆円。
0 兆円
2029年末のST(デジタル証券)発行累計。不動産STを中心に社債・ファンド持分へ拡大。
0 億ドル
米国現物ビットコインETFの残高(2026年6月)。ピーク時は約1,700億ドル——日本試算の参照点。

「待つこと」のコストは、平時には見えない。

制度確定後に一斉スタートする後発の金融機関は、最初の1〜2年を教育・技術基準・法務精査といった体制整備に費やすことになります。そしてこの差は、いま事業成果には表れません。ETF販売のように全員が本格運用前の役割では、準備の進度差は見えないまま蓄積し、解禁初年度に初めて——「動ける役割を先に整えた金融機関」と「確定後に着手する金融機関」の分岐として——表面化します。

CONCLUSION
2028年を「スタートライン」と見るか、
「準備が終わっているべき時点」と見るか。

答えは明快です。先行できるのは「業態」ではなく、「役割」——大多数が「未確定だから待つ」を選んでいる現在だからこそ、依存の浅い役割から先行して準備を進める金融機関が、相対的な優位を取れます。ガイドライン確定の有無にかかわらず着手できる役割(人材・教育・技術基準・法務精査・発行体準備・カストディ開発)から始め、確定後に動く役割(申請・販売体制・商品最終化)と明確に分ける——この役割単位の仕分けを自社の見取り図に照らして設計できるかどうかが、2028年以降に先手を取るための実質的な競争優位の源泉になると、HashHubは考えています。

MONITORING INDICATORS — フルレポートで追跡する8指標

  • 金商法改正の成立・公布・施行政令(施行日の確定)
  • 投信法施行令・金商法施行令の改正、金融庁告示・パブコメ
  • 銀行・保険の監督指針改正(本体保有・子会社の交換業)
  • バーゼル暗号資産規制の国内告示への反映
  • 暗号資産ETFの組成・販売規制の具体的要件、カストディ監督基準
  • トークン化証券の国際的な上場・流通基準の整合
  • 機関投資家の運用ガイドライン・適格資産認定
  • 暗号資産サービス仲介業(2026年6月施行)の登録・媒介業務の動向
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自社の座標から準備項目へ。

本ページはエッセンスの抜粋です。フルレポート(PDF)では、主体別の仕分け・市場規模試算の前提テーブル・モニタリング指標・一次資料リンクまで、実務に落とせる粒度で提供します。

  • 金融機関7業態 × 7役割のフルマトリクスと個別解説
  • ETF残高4.8兆円試算の内訳と前提(既存移行/NISA新規/富裕層・法人)
  • 「今やる」項目と「確定後に回す」項目の具体的な仕分けリスト
  • 金融審WG報告・税制改正大綱ほか一次資料へのリファレンス

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